前回のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に関連して赤方偏移について---
遠方の星の光が実際に発している光より赤色側にズレて見える(観測される)、というのが赤方偏移。
赤い方へ移っていく。
世界がレッドシフト Redshift
というとアレだが、
宇宙の(遠方の)星全般がレッドシフト。
z
青い光の波長 < 赤い光の波長
青い光の周波数 > 赤い光の周波数
なので、
赤い方に偏移とは
波長が長い(周波数が低い)方にズレて見えるということ。
いわゆるドップラー効果。
救急車やパトカーのサイレンの音が
近づくとき高くなって(周波数・高、波長・短)
遠ざかるとき低くなる(周波数・低、波長・長)
という日々よく耳にする現象。
光は音よりもずーっと高速なので地球上の物体から光のドップラー効果を視認することはできないが、
遠方の銀河・星が発する光の赤方偏移はドップラー効果で説明できる。
ある程度まで --- 赤方偏移の度合いを表すzの値が小さい場合。
このz値は
1+z = λ’/λ
λ’:観測波長(偏移されている光)
λ:発信波長(実際に発している光)
もしくは
z = Δλ/λ
Δλ=λ’-λ
で表される値。
波の関係式 c=fλ、c=f’λ’なので
c:光速
1+z = f/f’
f’:観測周波数
f:発信周波数
で表されることもある。
観測者が静止していて、光の発信源が速度vで遠ざかる場合のドップラー効果は、
f’ = {c/(c+v)} ・ f
λ’ = {(c+v)/c} ・ λ
なので
※ 説明を省いているが、f’はfより低い値、λ’はλより長い値になる
1+z = λ’/λ = (c+v)/c
z = v/c
zの値が非常に小さい場合(発信源の後退速度が光速より遥かに小さい場合)
つまりz<<1(v<<c)の場合
z = v/c
理科年表によるとz < 0.05の時は誤差は無視できる。
z < 0.1の時もあまり気にしなくてよさそう。
膨張する宇宙
z=1ではv = cではなく
もっと混み入った式になっている。
※ vが光速に近づいてくると相対性理論を考慮する必要が出てくる
v/c = {(1+z)2-1} / {(1+z)2+1}
もしくは
1+z = √(1+ v/c) / √(1- v/c)
という式になっている。
※ 理科年表など参照
√は平方根
z=1を代入してみるとv = (3/5)c
z=10だとv = (120/122)c
もしもz = v/cでz=10だと
v = 10c、つまり光速の10倍になってしまうが、
上の混み入った式ならば
zが大きくなっても
後退速度 v < 光速 c
が保たれる。
後退速度が超光速だったら地球まで光が届かないじゃないか、と思ったこともあるが、v < c。
そもそも観測する光は現在放たれている光ではなく遠い昔に放たれた光。
(見かけ上)100億光年先の銀河・星であれば、
観測される光は100億年前に放たれた光。
注意すべきは、その100億年の間に光を放った銀河・星はどんどん遠ざかっているという点。現在も遠ざかっている。
また、遠方になればなるほど遠ざかる速度(後退速度)が速くなる ・・・ ハッブル[・ルメートル]の法則。
宇宙は膨張している---
アインシュタインさんも認めざるを得なかった。
z=0.1の銀河・星は10億光年以上先で、10億光年以上遠方だと見かけ上の距離と現在の距離がズレてくる。
次のページの表(www.sci-museum.kita.osaka.jp/~ishizaka/table02.html)を参照
※ 石坂千春氏HP - 『宇宙は400億光年先まで見えている!?~赤方偏移と距離の関係~』(www.sci-museum.kita.osaka.jp/~ishizaka/redshift.html)
表の値はパラメータ次第で変わってくる。この表で使われているハッブル定数は67.15 [km/s・Mpc-1] だが、1つの目安として参照
z=0.2の銀河・星は(見かけ上)約25億光年以上先。現在の距離と1億光年以上ズレてくる。誤差にしては大きい。
z=1の場合、(見かけ上)80億光年弱遠方で、現在の距離は110億光年以上先。
z=5の場合、(見かけ上)125億光年強で、現在の距離は260億光年弱。
前回触れた(現在確認されている)最も遠方の銀河・星のz値は、
---遠方の星---
イカロス (見かけ上)約90億光年先
z=1.5
エアレンデル (見かけ上)約129億光年先
z=6.2
---遠方の銀河---
GN-z11 (見かけ上)約134億光年先
z=11.0
銀河候補 HD1 (見かけ上)約135億光年先
z=13.3
エアレンデルの現在の距離は約280億光年で見かけの倍近く遠方。
z=10超の銀河の現在の距離は300億光年以上。
z=100超だと400億光年以上。
z=1000超だと450億光年以上。
※ 宇宙背景放射領域のzが約1000
宇宙誕生はz=∞(無限大)。
宇宙年齢が138億年だからといって
138億光年先がこの宇宙の果てではなく
この宇宙の果ては450億光年以上先。
よく分からない領域。
超光速で後退しているじゃん、と思わずにはいられないが、
矛盾ではない(らしい)。
理論難解。
観測不能。
でもジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はこれまで以上に限界に迫ることができる。
よく分からないのが宇宙
よく分からないのが宇宙人