放射性物質が放出する放射線は目に見えないが、自然界(天然)にありふれた存在。
良いか悪いかは程度と使い方で変わってくる。
使い方のほうは使う方によっても変わってくるが、程度のほうは基準があるので、単位を知って理解を深めよう。
シーベルト Sv
原発事故の前はシーボルトのほうが馴染みがあったが、シーベルトも人名。
受ける放射線量すなわち被曝線量の単位。
事故の後たびたび見たであろうシーベルトの図。下は環境省のサイトからコピーした早見図。
※ 環境省 放射線による健康影響等に関するポータルサイト(www.env.go.jp/chemi/rhm/portal/) - 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
1ミリシーベルト mSvが一般人の1年間の被曝線量限度と定められている。ただし、医療被曝を除く、とのこと。
1年間の自然放射線の被曝線量世界平均が2.4mSv、日本平均が2.1mSv。
内訳をみると日本は食物からの被曝線量が世界よりも高く約1mSv。
1年間の医療被曝線量世界平均が0.6mSv、日本平均が3.87mSv。
結構気になる。
世界には自然放射線の被曝線量10[mSv/年]の地域もある。
居住不可となっている福島県の一部地域は20[mSv/年]超。自然減 + 除染で10年経ったが、未だ帰還困難区域有り。
単純計算だと1[mSv/年]、20[mSv/年]は、365[d]と24[h]で割って各々0.11[μSv/h]、2.28[μSv/h]になるが、屋内滞在16時間4割低減の計算式で各々0.23[μSv/h]、3.8[μSv/h]になっていた。
※ {0.19[μSv/h] × 8(屋外)[h] + 0.19[μSv/h] × 16(屋内)[h] × 0.4(低減)} × 365[d] = 1[mSv/年] ・・・ 自然放射線0.04[μSv/h]差し引き
{3.8 × 8 + 3.8 × 16 × 0.4} × 365 = 20[mSv/年]
帰還困難な酷く汚染された地域は16[μSv/h]超とされていたが、
(16 × 8 + 16 × 16 × 0.4) × 365 = 84096[μSv/年] = 84[mSv/年]。
おおよそ20[μSv/h]で100[mSv/年]ぐらいのはずだが、一応、20[μSv/h]で計算してみると
(20 × 8 + 20 × 16 × 0.4) × 365 = 105120[μSv/年] = 105[mSv/年]。
100mSv超えてくると一部で癌(がん)発生。
100mSv以下で癌が発生しても放射線の影響なのか別の原因なのかよく分からない、とのこと。
一応、目安として一般人の生涯(累積)被曝線量は100mSvまで。
放射線を扱う人は1年間50mSv、5年間100mSvまで。
原発事故の際、緊急時の特例として250mSvまで引き上げられた。
放射線を扱う人や宇宙飛行士の生涯(累積)被曝線量は目安として1000mSv(=1Sv)まで。
人類の挑戦を阻むシーベルト。
ベクレル Bq
ベクレルは放射能の単位。「放射能を浴びる」などと使われていたが、放射能とは放射線を放出する能力。
ベクレルは人名。レントゲンがX線を発見した後、ベクレルがX線とは異なる放射線をウラン(ウラン塩)から発見した。放射能を有する物質すなわち放射性物質の発見者。それまでもウランは人知れず放射線を出していたが、1896年に人類にバレて、原子がもっと細かい粒で構成されていることが判明した。
1秒あたり原子核1個崩壊(壊変)で1ベクレル Bq。
ベクレルの後、キュリー夫妻がウラン鉱から別の新しい放射性物質 ポロニウム Po(原子番号84)とラジウム Ra(原子番号88)を発見した。
キュリーも放射能の単位で、1キュリー Ci = 3.7×1010[Bq]。
1[Ci]はラジウム1g(グラム)の放射能で、1秒間にラジウム原子核370億個崩壊(壊変)。
単位ベクレルの場合、同じ値でも放射性物質が違えば人体への影響も違ってくる。
原発事故の後は、主に放射性セシウム(セシウム137、セシウム134)、放射性ストロンチウム(ストロンチウム90、ストロンチウム89)、放射性ヨウ素(ヨウ素131)などのベクレル表示を安全基準等で見掛けることが多かった。
例えば、食品の安全基準は、
- 放射性セシウム 一般食品 100[Bq/kg]
- 放射性セシウム 飲料水 10[Bq/kg]
- 子供がよく飲む牛乳と乳幼児食品は一般食品の半分 50[Bq/kg]
基準値以下の摂取ならば年間被曝線量1mSv内に収まる、とのこと。
なお、事故直後から2011年度(2012年3月)までは暫定規制値で、
- 放射性セシウム 一般食品 500[Bq/kg]
- 放射性セシウム 飲料水、牛乳 200[Bq/kg]
- 放射性ヨウ素 一般食品 2000[Bq/kg]
- 放射性ヨウ素 飲料水、牛乳 300[Bq/kg]
だった。
年間被曝線量5mSv内。
平常時の基準値が「新基準値」と呼ばれるイヤらしさ。
[Bq/kg]、[Bq/l]、[Bq/m2]は濃度。
放射性セシウム等の土壌への沈着量が[Bq/m2]などで記されている。
放射性セシウム 8000[Bq/kg]超の土は、通常廃棄、埋め立て不可の汚染土。
8000[Bq/kg]以下ならば廃棄物処理作業員の年間被曝線量は1mSv内、とのこと。
上記の他、原発から放射性物質の大気中、海洋への放出量がベクレル [Bq]で記されていた。
万テラベクレルと言われても全然ピンと来ないが、
1テラベクレル TBq = 1012[Bq] = 1兆[Bq]。
1万兆 = 1京(けい)で、1万[TBq] = 1京[Bq]。
1000[TBq] = 1ペタベクレル PBq = 1015[Bq] = 1000兆[Bq]。
10[PBq] = 1京[Bq]。
ベクレルからシーベルト
ベクレルの値が大きくなれば環境への影響も大きくなる。
だが、ベクレルの値だけでは人体への影響がよく分からない。
シーベルトへの換算は、
- ベクレル Bq ⇒ 吸収線量 グレイ Gy
※ グレイも人名。放射線のエネルギー 1J(ジュール)を1kgの物体が吸収すると1グレイ Gy。1[Gy] = 1[J/kg]
組織・臓器ごとに
- 吸収線量 Gy × 放射線加重係数 ⇒ 等価線量 シーベルト Sv
※ 放射線加重係数 --- α線:20、β線:1、γ線:1、X線:1 - 等価線量 Sv × 組織加重係数 ⇒ (総和が)実効線量 シーベルト Sv
となっている。
よく分からなくても経口摂取(食道から)かつ成人の場合、[実効]線量換算係数が、
セシウム137 --- 1.3×10-5[mSv/Bq] = 0.013[μSv/Bq]
セシウム134 --- 1.9×10-5[mSv/Bq] = 0.019[μSv/Bq]
ヨウ素131 --- 2.2×10-5[mSv/Bq] = 0.022[μSv/Bq]
となっているので、この値を使えば容易に計算できる。吸入摂取(気道から)の場合、値が異なる。
例えば、放射性セシウム 25800[Bq/kg]込みのアイナメは、セシウム137の値を使うと
※ 基準値は100[Bq/kg]
25800[Bq/kg] × 0.000013[mSv/Bq] = 0.3354[mSv/kg]。
300[g]食べた場合、約0.1[mSv]
といった具合。
放射性セシウム 500[Bq/kg]込みのクロソイは、2011年度ならば499.999でセーフになっていたかもしれない。そういう問題じゃないかな。計算してみると
500[Bq/kg] × 0.000013[mSv/Bq] = 0.0065[mSv/kg]。
300[g]食べた場合、0.00195[mSv]。
ソイという魚は結構美味しい。
100[Bq/kg]超の魚を1匹2匹食べたからといって、たちまち障害起こすレベルではないようです。
だが、事故前の海、事故前の森が比較対象であることを忘れてはいけないと思います。
人それぞれ健康状態が異なり、係数も今後変わる可能性がないわけではないが、 “ある程度”知っておくと危険か否か“ある程度”判断できる。