「核のごみ」処分場問題について その2

ENERGY

 その2と言うからにはその1がある。

 2020年10月、北海道寿都町と神恵内村が最終処分場選定の第一段階「文献調査」に応募して、はや3年が経過。
  実施主体の原子力発電環境整備機構 NUMOによる調査はほぼ終わって、第二段階の「概要調査」(ボーリング調査)に進むか否か注目される。

 「文献調査」に応募するか否か揺れていた長崎県対馬市は先日(9月27日)、市長が応募しないと表明した。
 市議会の採決は賛成10、反対8だったので、一件落着するかどうかは次の選挙などにもよるが、ひとまず下火になった。

 応募しない理由は、 

  •  市民の合意形成が不十分
  •  観光、水産業への風評被害の懸念
  •  「文献調査」を受け入れたら次の段階「概要調査」に進まないわけにはいかない
  •  安全性、危険性

とのこと。

 前回『(第二段階までで)終わると思うが……』と記したが、甘い考えだったかもしれない。
 「文献調査」の交付金(最大20億円)をもらってオシマイでも良いのでは……、
 「概要調査」の交付金(最大70億円)をもらってオシマイでも……、
という考えも浮かんでくるが、
 調査の結果、「適」と判定された場合、断りにくくなるというのが実情なのだろう。
  ※ 「科学的特性マップ」を見ると対馬は「適」になっている

 「文献調査」はほぼ机上の作業ということなので、然らば応募があろうとなかろうと調査可能ではないかと思わずにはいられないが、
 住民との対話、説明に要される期間でもあり、
 専門の人に丁寧に説明されれば、おそらく賛成する人が増えていくのであろう。
 実際どうなるか寿都町と神恵内村が注目されるが、
 ただし、こちらは近くに既存の原子力発電所(泊原発。停止中)があるという点で状況がやや異なる。

 NUMOの資料によると最終処分場には高レベル放射性廃棄物 = ガラス固化体4万本以上が埋設される。
 現在貯まっている高レベル放射性廃棄物は2万5000本以上に相当

 100年間で4万本分満杯になってしまう。
 次の100年は?、その次の100年は?、……。

 最終処分場は原子炉のような動的な施設ではなく、
 再処理後の高レベル放射性廃棄物は、“燃える”ウランやプルトニウムが採り出された後。
 既存の原子力施設にも貯蔵されているので、
 必要以上に恐れる必要はないと思うが、

 人目にふれない地下空間
 目に見えない放射線

 先行している国は、フィンランド、スウェーデン。
 フィンランドの原子力発電所は南部の2ヶ所。
 うちユーラヨキ オルキルオト原子力発電所に最終処分場「ONKALO(オンカロ)」建設中。地下450m。

 スウェーデンの原子力発電所は3ヶ所。
 うちエストハンマル フォシュマルク(フォルスマルク)原子力発電所に最終処分場選定。ストックホルムの北、オルキルオトの対岸。

 フィンランドもスウェーデンも使用済み燃料直接処分(再処理しない)。
 既存原発の付随施設のような印象を受けるが、複数の候補地から絞り込んだ結果とのこと。

 フランスの候補地は東部の内陸。
 スイスも内陸。これは当然。

 上記の国々では、存外、大都市から遠く離れているわけでもない。

  •  電気事業連合会HP(www.fepc.or.jp/) - 情報ライブラリー … 2023年4月3日 【国際】世界の最終処分場選定に向けた動向
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 ほとんどの国は未決定だが、少しずつ進展している。

 現状、日本において不安を完全に払拭するのは難しい。
 信用が地に溶けおちて、只今マイナスからの回復途上。
 再処理工場が宙ぶらりん。反対している政治家もいるので、途中で直接処分に一転する可能性も0ではない。
 2023年、原子炉の運転期間を延長できるように変更。再稼動済みの原発は現在6ヶ所。2024年には8ヶ所で稼動予定。使用済み燃料も増えていく。
 流動的で先行き不透明感が結構ある。
 「先延ばししない」と言うと聞こえは良いが、前のめりになりすぎても良くない。

 最終処分場は千年万年、つまるところ半永久的に特殊な区域と化す。
 NUMOの資料によると地上施設1-2km2、地下施設6-10km2

 なかなかココが良い、ココはダメと言いづらい。
 とはいえ、対馬の場合、原子力施設があるわけではないし、
 国境離島なので科学的ではない要素 -政治・外交-が不安。半島情勢が急変すれば慌しくなる。

 対馬市長が
 「これ以上、市民の分断を深めたくない」
と述べる一方、
 内閣官房長官は文献調査の実施地域拡大を目指すと言い放つ。

 果たして日本全国の自治体みな一律に立候補募る必要があるのだろうか---。
 高レベル放射性廃棄物は再処理工場から運搬され続けるので、遠くに離れすぎているところは調査するまでもなく不適に思えるし、
 困窮している自治体を待ち受けているかのようにも見えてしまう。
 日本全国いたずらに賛成派・反対派の分断を生み出すのは良くない。
 応募する自治体がないのであれば、
 サンプルとして
 電力消費量の多い大都市などの自治体で「文献調査」をしてみるのも一案だと思う。

 本命はドコですか?

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