原子力発電所(原発)から出続ける高レベル放射性廃棄物の最終処分場をどこに造るかという大きな問題。
考えたところで答えが出る問題ではないが、今月(2020年10月)、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が処分場選定の第一段階「文献調査」に応募した。
2007年、高知県東洋町(室戸市の隣)以来の応募。
東洋町が全国初の応募で、紛糾の末撤回。同じ頃、秋田県上小阿仁村も応募を検討したが断念している。
放射性廃棄物
高レベル放射性廃棄物とは、放射性廃棄物のうち放射能レベル(ベクレル値 Bq)が高い廃棄物のこと。俗に「核のごみ」と呼ばれている。原発の使用済み燃料が該当する。
その他諸々が中・低レベル放射性廃棄物。日本では中も低もみな低レベル放射性廃棄物と呼ばれている。
使用済み燃料は再処理することで
- 再利用できる燃料(燃え残りのウランと新しく生成したプルトニウム)
- 低レベル放射性廃棄物
- 高レベル放射性廃棄物
に分けられる。
未処理のまま直接処分するより減容(容積減量)できる。つまり「核のごみ」が増えていくペースを抑えることができる。
※ 資源エネルギー庁によれば約1/4に減容化
原発が稼動し続ける限り(使用済み燃料が出続ける限り)、再処理の過程(核燃料サイクルの一部)は必要とされるであろう。
低レベル放射性廃棄物は、ドラム缶に入れて地中浅いところに処分、
高レベル放射性廃棄物は、ガラスと混ぜ固めてステンレス容器に入れ(=ガラス固化体にして)、約30年-50年間地上の施設で冷却保管した後、地中深いところに処分する。
「核のごみ」の問題は、1960年代に最初の原発が稼動する前から十分認識されていたようで、半世紀以上先送りされてきた「負の遺産」。この点に関しては日本だけの問題ではないが、原子炉を次々と50基超も造り続けてきたのは問題であると思う。
かつて低レベル放射性廃棄物をドラム缶に入れて太平洋に投棄する計画が進められ、1980年代初頭、実行されようとしたことがあった(未遂)。場所は小笠原諸島北東の公海海域(30°N、147°E)、水深約6000m。
その後、低レベルであっても海洋処分は原則禁止になった。
放射性廃棄物の海洋投棄、ロンドン条約については以下のページ等参照。
原子力百科事典 ATOMICA … わが国の海洋投棄中止にいたる経緯(atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_05-01-03-11.html)
2011年の原発事故の後には、モンゴル、アメリカの包括的燃料サービス CFS構想なるものに日本も参入、という報道もあった。
原発を動かしている国がモンゴル産のウラン燃料を使って、(その分の)使用済み燃料はモンゴルで処分するという構想だったが、モンゴルが断って立ち消えになった。
どのみち自国の分は自国内で処分しなければならないので、仮に原発をやめたとしても最終処分場は自国内のどこかに必要になる。
「核のごみ」でなくても他の地域のごみの受け入れには反対の声がつきまとう。「核のごみ」なら尚更。世界共通。
世界中ダメなら宇宙処分が良いのではと思うが、宇宙まで運んで地球重力圏外へ放たれるまでの間にトラブルが起こるかもしれない。難しい。
海洋処分ダメ、宇宙処分ムリ、……
で、地層処分。長期にわたり安定し続ける(ハズの)地層の奥深く(地下300m以深)に「核のごみ」を捨て置く。ほぼ世界共通。
資源エネルギー庁によれば「核のごみ」が天然ウラン並の放射能レベルになるまで約8000年。再処理せず直接処分だと約10万年。
科学的特性マップ~
2017年に最終処分場選定の一歩として「科学的特性マップ」が公表されている。
資源エネルギー庁のHP(www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/)からダウンロードできる。
火山の近く、活断層の近く等が「不適」で、地下資源(油田・ガス田、炭田等)が存在しうる地域も将来掘削するかもしれないという理由で「不適」になっている。
一方、搬入の観点から沿岸部(沿岸からおよそ20kmまで)が「適」になっている。こちらは利便性の観点が強い。
もっと高いところから俯瞰するなら、日本全体「不適」ではないかと思えなくもないが……。
だが、安全性が大事なのは当然として、別のところに問題があるように感じる。納得できるような説明が無理だとしても誠意が感じられない説明だと反対したくなる。例えば福島第一原発から出るトリチウム水の扱いをみても除去しようとする姿勢があるのとないのでは違う。
一応「科学的特性マップ」をみておくと
積丹半島の神恵内(泊原発のある泊村の隣)は、ほぼ全域「不適」
神恵内の南に位置する寿都は、ほぼ全域「適」
になっている。
今後「文献調査」でより詳しく「適」か「不適」か調べ、次の「概要調査」でボーリング調査を行って「適」の範囲を絞り込み、第三段階「精密調査」で地下に施設を造って試験を行う、という運びになっている。
実施主体は原子力発電環境整備機構 NUMO(www.numo.or.jp/)。
この類の問題は次第に街中が賛成派と反対派に二分されて険悪な雰囲気になってしまう。絆を分かつ力が働くようだ。
おそらくその前に(第二段階までで)終わると思うが……。
どうしてもそこでなければいけないという理由が希薄なので難しい。
とはいえフィンランド、スウェーデンのように最終処分場決定済みの国もある。
※ フィンランド ユーラヨキ ONKALO(オンカロ)という施設
スウェーデン エストハンマル
現在、青森県六ヶ所村に使用済み燃料の再処理工場(未だ本格稼動していない)があり、その隣に最終処分までの約30年-50年間高レベル放射性廃棄物を冷却保管しておく貯蔵管理センターがある。
また、道北・幌延町の幌延深地層研究センター(日本原子力研究開発機構 JAEAの施設)では、既に地下350mまで掘削されて調査研究が行われている。
追)2022年現在、地下水流動に関する調査研究など
北海道、青森、……。いつどこに決まるか分からないが、スッキリとした問題解決にはならないだろう。