前回の続き。
その3
旧石器時代の日本列島は縄文時代ほど一様にはつながっていなかった。
旧石器時代人は基本的には日本列島が大陸と地続きだった時に渡って来た人々(の後裔)とみられ、「海の民」にはみえないが、沖縄や伊豆諸島など一部において、渡海していたと解す他ない遺跡がある。
※ 約38000-37000年前の静岡県沼津の遺跡から伊豆諸島・神津島産の黒曜石が見つかっている
約38000-37000年前という年代は日本列島の(現生人類の)旧石器時代人の最古の痕跡。これ以上古くなると(現生人類とは違う)原人/旧人の可能性が高くなる
この謎に迫ったのが2019年に与那国島-タイワン(台湾)の海峡で実施された『3万年前の航海 徹底再現プロジェクト』。
個人的には疑問に思う点がいくつかあり、
黒潮北上説は可能性として残しておいてほしい、と記したが、
その後、昨年(2020年)12月、漂流ブイのデータから『漂流説がほとんどあり得ない』旨の報告があった(『3万年前の航海 徹底再現プロジェクト』の関連研究)。
3万年前の琉球列島への移住は偶然ではなかった -石器人の漂流説を否定する新たな証拠- / 東京大学総合研究博物館(www.um.u-tokyo.ac.jp/research/umutnews/2020120401.html)
今日の黒潮の流路と3万年前の黒潮の流路が同じか否かという点についても『過去10万年以上変わっていません』とのこと。
タイワン(台湾)のみならずフィリピン(のルソン島)から沖縄まで漂流ではほぼ辿り着けない
⇒ 丸木舟で海を渡った……
旧石器時代人のイメージ転換を迫る内容。
その4
2018年の夏、インドネシアのスラウェシ島北部沖からグアム沖まで49日間漂流した人がいて、その舟は小屋付きの木製筏だった。
こちらのドンブラコのほうが(個人的に)抱いていた舟のイメージ。
いずれにせよタイワンを移動の起点として終わる話ではないように思う。
タイワンは当時[中国]大陸と地続きで、大陸沿岸に「海の民」らしき人々が現れるのは比較的遅い。
フィリピンへの人の流れをみても約1万年前以前はタイワンからの渡海ルートではなくインドシナ半島南下ルート。
※ 当時インドネシアはボルネオ島まで地続き。いわゆるスンダランド
オーストロネシア語族(マレー系)の拡散前
『フィリピン、古代に5回の人類大移動経験 DNAマッピング研究』
SciencePortal Asean - 科学技術ニュース - 2021年05月(spap.jst.go.jp/asean/news/210504/topic_na_05.html)参照
https://doi.org/10.1073/pnas.2026132118
先史時代、先島諸島との関連が指摘されているフィリピン~インドネシア方面をみると、4万-3万年前の時点で既に多様だったとみられ、「海の民」もいた。
フィリピンには6万年以上前にルソン原人(2019年命名)がいて、何らかの方法でルソン島まで海を渡った(地続きではなかったらしい)。
現生人類ではなく、これまた謎めいている。
現生人類ではネグリト族がフィリピンの先住民で、少なくとも3万-2万年以上前にフィリピンに到達していたとされる。
※ ネグリト族もオーストロネシア語族とされているが、マレー系ではなく元々はパプア・アボリジニの人々に近い系統。
さらにネグリト族のうちアエタ(アイタ)族 Ayta(のマグブコン族 Magbukon)にはデニソワ人の遺伝子が、(今まで最多とされていた)パプア・アボリジニの人々より多く残っていることが判明した。
※ デニソワ人は原人/旧人と現生人類の中間的ポジション
絶滅人種とされ、化石人骨は今のところアルタイ~チベットの2ヶ所しか見つかっていないが、遺伝子はアジア~オセアニアの人々に受け継がれている
追)2022年に東南アジア(ラオス)でも発見
『フィリピン先住民、最も強くデニソワ人のDNAを持っていた 国際研究で判明』
SciencePortal Asean … 2021年09月(spap.jst.go.jp/asean/news/210904/topic_na_01.html)参照
https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.07.022
ルソン原人は小柄。
ネグリト族は小柄。
インドネシアのフローレス原人は小柄。
石垣島の旧石器時代人(白保人)は比較的大きいが、
沖縄本島の港川人は小柄。
港川人と似ているのがワジャク人(インドネシアのジャワ島)。
南洋/スンダランドの先住民は多様だが、小柄の人が多かったようです。
総合してみると
([中国]大陸 →) タイワン → 沖縄
より
南洋/スンダランド → タイワン
南洋/スンダランド → 沖縄
のほうが無理ない感じだが、……
先史時代の南洋は謎が多い。
今年は他にも
沖縄で縄文時代からブタが飼育されていた
※ 嘉手納町野国貝塚
という考古ニュースもあった。
名古屋大学 研究成果発信サイト(www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/) ・・・ 2023年、URL変更
2021/04/06 『7200年前の沖縄に多数のブタがいた』
従来最古の約3000年前というのは消化できるが、
※ 佐賀県唐津市菜畑遺跡
約7000年前かつ[中国]大陸から、となると消化不良。
あぐー
ぐあー
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2021年おしまい。
来年は寅さん。