丹沢の山々を登っているうちに、もしくは地図を見ているうちに、だんだん気になってくるところが山北と津久井の間の犬越路(いぬこえじ)トンネル。
ヤビツ峠から山中湖までの間、丹沢山地の南北を貫いている車道はここだけなので、通れるのか通れないのか気になってくる。
トンネル南の山北側は犬越路林道、北の津久井側は神ノ川(神之川)林道で、
結論から言うと一般車両通行不可。ゲートがある。
犬越路探索
トンネル編
第1回 8月。
犬越路林道は、歩行可能なので、歩いた。
稜線に出れる道があったらいいな、カモシカに会えたらいいな、と思いながら。
山道歩きのほうが林道歩きよりも楽なことが多いが、
ところどころ展望があって、登山口方面の山なみ・谷あいの景観が新鮮に感じられた。
▼ 中川川方向
1時間半程かかったものの、途中休憩所(はんの木園地)もあって、さほど苦もなくトンネルまで辿り着いた。
しばし、稜線に通じる道がないかトンネルの両脇を探索。
シカがキャンと鳴き出して、別のところでも鳴いて、警戒されているのか、それとも……。
道はなかった。
あとで調べたらトンネル反対側(神ノ川側)に点線が記されていた。(先に調べようね。)
第2回 6月。
犬越路トンネルは全長約800m。トンネル向こうの明かりが見えるものの中は暗く歩くのは気が進まなかった。行って戻ってくる場合、計1.6kmのトンネル歩き。正直苦手。
で、今度は自転車持っていった。
車両なので通行可否はグレーだが、途中歩いていた地元の人が応援してくれたし……
まあ、ほとんどの区間手押し、つまり歩行だった。
▼ 林道途中から小笄(小コウゲ)~大笄(大コウゲ)方面
休憩後、意気揚々トンネルの中へ突入したが、中から冷気が突き抜けてきてゾワゾワして---
やめた。折り返し。
神ノ川林道のほうが悪路とのこと。
稜線に通じる道はやっぱりトンネル反対側にあって、通れるらしい。
参考)明治大正昭和 - 犬越路隧道(nobuhito.com/meiji-taisho-showa/inukoeji-tunnel/)
山北側トンネル坑口の山側は崩れてしまっている。
自転車なので、下りは10分程。最後ヘアピンカーーーブ。
途中、檜洞丸方面にも林道が延びている。東沢林道(ダート)。
下の白石林道から分岐までの区間も東沢林道で、分岐から上が犬越路林道。
峠編 -神ノ川から大笄・小笄周回-
第3回 5月。
トンネルではなく稜線上・峠の犬越路。津久井側から周回した。
トンネルの標高が約940m、峠のほうは標高1060m。
- 神ノ川園地(日陰沢橋、長者舎) - 矢駄(ヤタ)尾根 - 熊笹ノ峰
- 熊笹ノ峰 - 大笄(大コウゲ) - 小笄(小コウゲ) - 犬越路
- 犬越路 - 日蔭沢(日陰沢) - 神ノ川園地
前にツツジ新道から檜洞丸に登った時、檜洞丸~犬越路の間が好展望で良いルートと耳にした。ただ、危険箇所があると聞いて周回しなかった。
さて、神ノ川から尾根を登って熊笹ノ峰。
ここまでは存外良いルート。
檜洞丸には登らなかったので、未踏区間として残ってしまった。
檜洞丸方面は山頂直下が急だが、問題なさそう。
大笄から小笄に下っていく区間が急な岩場で少々緊張強いられた。鎖場、ハシゴがある。
好天時に余裕を持って歩けば、特に怖さを感じることもないと思う。
大笄はどこがピークなのかよく分からないうちに下ってしまった。
笄(コウゲ)はコウガイビルの笄(コウガイ)。イチョウ形。大笄、小笄の名の由来、正確な位置については諸説あるらしい。
犬越路に着いてみると結構人がいた。
キレイな避難小屋もある。
(登らなかったが、)大室山までコースタイム2時間弱。
- 犬越路 - 大室山
犬越路から神ノ川への下りは、日蔭沢上部のガレ場が注意箇所(足元および方向)。
沢沿いだが、沢歩きではなく、林の中。
やがて林道に変わり、神ノ川ヒュッテに着く。
なお、日蔭沢新道は別ルート。神ノ川ヒュッテから大室山の東の尾根に登るルート。
峠編 -用木沢往復-
第4回 12月。山北側から。
白石林道の奥、用木沢出合から犬越路往復。
以前はウェルキャンプ西丹沢の駐車場も使えた。
HP(well-camp.com/)見ると今はキャンプ場利用者のみ。
- 西丹沢ビジターセンター - 白石林道 - 用木沢出合 - 用木沢 - コシツバ沢 - 犬越路
林道が二手に分かれて、右へ。
左は白石峠。大室山周回も可能。
- 用木沢出合 - 白石峠 … 大室山
林道から立派な歩道橋(用木沢公園橋)を渡ると山道。
前半は沢沿いのほぼ平坦な道。渡渉箇所もあるので、増水時は影響を受ける。右か左か分かりづらい箇所もあった。
用木沢の上部は地図を見ると砂防堰堤群、犬越路トンネル方面に続いているが、左に折れる。
涸れ沢の広場で休憩後、ひたすら登る。コシツバ沢の標識。
※ 昔のガイド本(昭文社 山と高原地図)にはコシツバ沢が越場沢、用木沢が陽木沢と記されている
急登のち峠着。
▼ 犬越路から南、中川川方向
沢を横切ったり進んだり、という道は迷いやすいので要注意。山中の行方不明は、沢に迷い込んでいる場合が多い。
犬越路の沢は全般的に荒れ気味だった。
大雨の後などは西丹沢ビジターセンターなどで要確認。
丹沢 北条 vs 武田
一説によると武田信玄が犬を先導させて通ったので犬越路。なかなか険しい峠越え。
武田軍の小田原城攻めに関連して知られているのが1569年の三増(みませ)合戦で、甲州街道や道志みちが武田軍の退却ルート。
※ 愛川 三増峠
主力の進軍ルートは甲・信からいったん北関東に入ってから、ぐるりと相模へ南下している。
退却の際、道志みちから神ノ川を通った一団がいたのかもしれない。
神ノ川入口の青根で、北条軍傘下の日向薬師の山伏が返り討たれたという歴史もある。
※ 青根 法印の首塚
その後も武田軍は西丹沢に入って、北条氏の中川城や河村新城(R246清水橋近く)などが落城。これは史実のよう。
中川温泉が武田信玄の隠し湯で、
西に一山越えたところに信玄平があり、
その南北に古道があった。
「さかせ古道」とも呼ばれているそのルートは、
道の駅どうし(道志)へ流れる三ヶ瀬(さがせ)川から城ヶ尾峠・城ヶ尾山を越えて、
信玄平 - 地蔵平 - 二本杉峠 - 中川川
というルート。
※ 神奈川県側、二本杉峠まで廃道
地蔵平にはかつて集落があり、学校もあった---。
秘境。世附から大又沢林道を通って行ける。