近年ちょくちょく見掛ける「第四次産業革命」。「第四次」と言うからには「第二次」、「第三次」がある。個人的にはあまり使うことのない用語だが、どのようなものか簡潔にみておこう。
[第一次]産業革命
通常、産業革命と言えば始まりの「第一次」を指す。
地球の平均気温、大気中の二酸化炭素濃度など地球温暖化絡みで、たびたび『産業革命前と比べて……』といった具合に言及されるが、年代で言うと18世紀半ば。1750年頃。
たいていの場合、18世紀後半-19世紀前半が「第一次」とされている。
始まりの地はイギリス。
・ 科学的発見というより技術的発明
・ 1つの発明というより幾つもの発明
が地道に積み重なって連鎖して開花した。
その中で中核は、やはり
・ 18世紀後半 ワットの蒸気機関
になるのだろう。
人力以外の動力といっても水車や風車が中世から使われているし、
紡績業から産業革命が始まったとも言われるし、
蒸気機関自体、ワット以前に発明されて、1712年にニューコメンが実用化させている。
※ シリンダー(筒)に熱せられた水蒸気を入れて、その蒸気圧でピストンを上げ、シリンダーを冷やしてピストンを下げ、繰り返し上げ下げ往復運動する装置
製鉄の燃料が木炭から化石燃料・石炭へシフトしていったのも18世紀前半。ダービー父子がコークスによる製鉄を始めている。
なぜワットなのだ?。
かつて抱いた疑問。
ワットの蒸気機関は、
わっと驚くほど熱効率が上がったから。
熱せられたシリンダーの温度が下がらないよう、もう1つ別のシリンダー(復水器)をつなげて、そっちで冷やすことにした。
1765年考案、1769年開発、1776年実用化。
電力の単位として使われているワット [W]は仕事率の単位。
馬力も仕事率の単位。
省力化できるようになって楽になる。
たいてい楽になっていないような気がするが……。
それは気のせいではなく、
もっと大きな仕事を求めてしまうからだろう。
省力だけなら古来テコの原理がある。
もう1つ重要なのは、産業革命以降、人と機械、機械と機械がつながり合って、年から年中動き続けるシステム(機関)が築き上げられていく点。
蒸気機関は石炭採掘で地下水の汲み上げ(揚水)に使われ、
度重なる改良によって大量の石炭が掘り出され、
その石炭を燃やして蒸気機関を動かし……。
このサイクルが持続しつつ拡大・発展していく。
19世紀前半、蒸気機関を動力とする蒸気船や蒸気機関車が作られて、
イギリスでは各地で鉄道が開通した。
水陸の交通輸送が格段に良くなっていった。
機械自体はワット以前から作られているが、
[エネルギー]効率向上と持続的発展(改良)がワットと結びつく。
「第二次産業革命」~
以降ざっとみておくと
「第二次産業革命」と呼ばれている時代は、19世紀後半-20世紀初頭。
イギリスにおいては産業革命の始まりから連続して発展し続けているので、明確な区切りはないが、鉄鋼の歴史(鉄「史」 -製鋼 その2-)で触れたようにドイツやアメリカが台頭して主導していく時代。
大きな流れの1つは、車と石油。
ワットの蒸気機関からカルノー・サイクルなど熱機関の研究を経て、19世紀後半、熱効率の高い内燃機関(エンジン)が発明される。
エンジンを搭載させた車をダイムラーとベンツが競い合って開発し、今日の自動車の原型が出来上がる。
20世紀以降、石油の大量生産とともにガソリンエンジン車が普及していく。
開発の舞台が移ったものの「第一次」の蒸気機関(外燃機関)の発明や石炭の利用と対比できるので、基本的には「第一次」の延長上で捉えることができる。
別の大きな流れの1つは、電気(電力)の利用。
エジソンの時代。
電灯、電話、……。
電動機、タービンで発電。
夜を照らす光によって
日夜四六時中動き続けるシステム(機関)へ。
2度の世界大戦を経て
「第三次産業革命」が、半導体、コンピューター、……。
原子力の「平和」利用やインターネットも「第三次」に入れられている。
広くみて20世紀後半。
「第二次」から続いてアメリカがトップランナーで、日欧も牽引。
20世紀後半は日本の高度経済成長期。
「第三次」の牽引役であったが、
「車社会」化、大量消費もこの時代。
※ アメリカの「車社会」化、大量消費は20世紀前半。
半世紀でいろいろ激変。
当たり前なのか特別な時代だったのか。
後者としか思えないが、認めたくない人もいる。
一時たりと止まることの許されないシステム(機関)へ。
「第四次産業革命」が、AI(人工知能)、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、スマート○○……
で、現在進行中。
「第二次」、「第三次」、「第四次」……と言うが、「第一次」からずっと産業革命が続いて今もその最中(さなか)にいるのかもしれない。
ただし、「第四次」はどこか別物感がある。