このところ元素、放射線の話が続いています。
先日、超新星爆発の引き金が「ニュートリノ加熱」であることの証拠を初観測、というニュースがあったので、反応。
※ 観測的証拠を発見
理化学研究所などの研究成果。詳細はこちらのページ(www.riken.jp/press/2021/20210422_1/)。
と言ってもいきなり爆発に至るメカニズムを理解するのは容易ではないので、超新星爆発に絡んで元素生成の話です。
一部の星(恒星)の最期に起こるのが超新星爆発。
この大爆発によって金 Au、銀 Agなど多くの重い元素が生まれた---。
鉛 Pb、ウラン Uも超新星爆発が生みの親。
今日地球上で天然に存在している(水素からウランまでの)元素は、約46億年前、地球が誕生した時、太陽・太陽系が誕生した時、既に星間雲(星雲ガス、塵)として存在していたことになるが、これらはさらに昔、(太陽系の)“近く”に存在していた恒星が超新星爆発を起こして飛び散って来た星屑(スターダスト)。
その恒星も遡れば昔の恒星の星屑、遡れば……、遡れば超昔、宇宙誕生。
宇宙誕生も「大爆発」だが、生まれた元素は軽い。
宇宙誕生から宇宙最初の恒星が生まれるまでの数億年の間、元素は水素 Hとヘリウム Heのみ---。
※ ごく僅かながらリチウム Li、ベリリウム Be、ホウ素 Bも存在したらしい
恒星の成分は、ほとんど水素とヘリウム。
核反応、主に水素による核融合で光り輝いている。
重力でガス(主に水素)が収縮して高温・高密度になり、反発し合っていた原子核同士が融合し合った時、さらに大きなエネルギーが発生して一層熱くなっていく。
しかし、どこまでも高温・高圧になっていくわけではなく、やがて燃料が枯渇し、熱は冷めていく。
重い(質量大の)星のほうが高温・高圧になるが、その分燃料の消費も早いので寿命が短い。
主燃料の水素が枯渇するとヘリウムを燃料とした核融合へ移っていく。
ヘリウムの次に重い元素はリチウム、ベリリウム、ホウ素だが、これらの元素以上に大量に生成されるのは炭素 C。
ヘリウムが尽きると炭素を燃料とした核融合へ移って、酸素 O、マグネシウム Mgなど重い元素が生まれる。
重い星の場合、最終的に鉄 Feまで生まれる。
原子核の核子(陽子、中性子)は「強い力」で結合しているが、鉄の原子核が全元素中最も強く結合している。鉄より重い元素は、核融合では作られない。
Y軸を原子番号(=陽子数)、X軸を中性子数とした核図表というものがある。
理化学研究所のHP(www.nishina.riken.jp/enjoy/kakuzu/)
でみられるが、さらにZ軸に[ポテンシャル]エネルギーを加えた『立体で見る核図表』のところに説明がある。エネルギーが低いほうが強く結合つまり安定した原子核。
ウランの自然崩壊(壊変)の終着が鉛。
核融合の終着が鉄。
燃料が尽きてくるとだんだん発生するエネルギーが小さくなって(表面温度が低下して)、老いた星は赤みがかかっていく。その中心はヘリウムの核になり、炭素、窒素、酸素が形成され、重い星の場合、珪素 Siなどさらに重い元素が形成され、中心は鉄の核になる。
我々の恒星=太陽の寿命は、あと50億年くらいとされているが、水素が尽きてくるとだんだん赤みがかって外層のガスが膨張し、水星、金星、地球、……を呑み込んでいく。いわゆる赤色巨星。
ただし、太陽の場合、鉄の核は形成されず、超新星爆発には至らない。外層のガスが散っていく一方、中心は高密度の星として残り、ゆっくりと冷えていく。いわゆる白色矮(わい)星。
超新星爆発を起こすのは太陽の質量のおよそ10倍以上の恒星。
中心に形成された鉄の核が自らの重さに耐えきれなくなって重力崩壊 - 大爆発を起こす。冒頭の「ニュートリノ加熱」はこの段階。
大爆発を起こした後、その残骸が散らばって「超新星」として観測されるが、かつての星の中心は超高密度の中性子星もしくはブラック・ホールになる。
※ 超新星爆発には、連星系で一方の白色矮星がもう一方からガスを吸収して爆発する別のタイプもある。
以上、元素生成は大まかに
- 宇宙誕生
- 恒星内核融合
- 超新星爆発 ・・・ r(rapid)過程
の時に分けられる。
※ 鉄より重い元素は、r過程の他、恒星内で中性子を捕獲して生成されるs(slow)過程もある。
参考元は、理化学研究所HPの他、
- 現代の宇宙像 / 佐藤文隆 / 1997 / 講談社
- 宇宙 最後の3分間 / ポール・デイヴィス / 1994 / -
- ホーキング、宇宙を語る / スティーブン・ホーキング / 1988 / -
など。