前回、軽石漂流で衛星「しきさい」を覗いて見たが、同時期に北海道で発生していた赤潮についても「しきさい」から見て探ることができる。小まとめ。
赤潮
赤潮は植物プランクトンの異常増殖で発生する海水の変色現象。
水中の酸素が欠乏するなどして魚介類が死んでしまう。
個人的に見た中で最も印象に残っている赤潮は3月に鹿児島湾で見たものなので、必ずしも暖かい季節に起こるというものでもないようだが、一般には海水温が暖かくなるとプランクトンが増殖していく。
赤潮の原因になる植物プランクトンは一部。とはいえ結構数多いので覚えられない。
- 渦鞭毛藻類
カレニア属 Karenia
カレニア・ミキモトイ K.mikimotoi、
ギムノディニウム属 Gymnodinium
プロロケントルム属 Prorocentrum
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夜光虫(ノクティルカ) Noctiluca ・・・ 渦鞭毛虫 - 珪藻類
- ラフィド藻類
シャットネラ属 Chattonella
有毒のプランクトンもある。それを食べた魚介類は有毒になり、それを食べた人は中毒になる。
今年(2021年)9月中旬以降、北海道南東沿岸で発生した赤潮の原因は、低水温で増殖する
カレニア・セリフォルミス Karenia selliformis
という有毒種。国内初検出。
先月(11月)下旬までにほぼ落ち着いたようだが、
その間サケ、ウニなどの魚介類が大量死した。
気候変動観測衛星「しきさい」
植物プランクトンはクロロフィル=葉緑素(光合成色素)を有しており、
JAXA 衛星「しきさい」GCOM-Cの
クロロフィルa濃度 CHLA
の画像を見ると濃い領域が分かる。
※ クロロフィルa、b、cは構造の違い。クロロフィルb、cは一部の植物のみ
JAXA しきさいポータル(shikisai.jaxa.jp/) - データ取得
の「準リアルモニタ – 日本」
からいろいろな項目(現在13項目)が一覧で見られる。
項目ごとに見たい場合、
「標準モニタ – 日本」、「標準モニタ – 全球」から。
SGLIは「しきさい」搭載のセンサー。
多波長光学放射計 Second-generation Global Imager。
観測波長帯は近紫外~熱赤外域 380nm-12μm(=12000nm)で19チャンネル CH。
クロロフィルa濃度は青~緑のチャンネル 443nm、490nm、530nmから推定。
各地域の赤潮情報等は、
しきさいポータル - 水産利用
から辿れる。
赤よりも濃い赤黒い領域がクロロフィルa濃度10mg/m3超。
北海道立総合研究機構(道総研)水産研究本部(www.hro.or.jp/fisheries/index.html)の2021年赤潮情報によると
クロロフィルa濃度15μg/l(=15mg/m3)以上で、K.selliformisによる赤潮が発生している可能性がある、とのこと。
濃いからといってみながみな赤潮ではないので、あくまでも可能性。
クロロフィルa濃度 CHLA
の画像を見ると
10月9日や10月13日の根室~えりも岬沿岸が赤黒い。調査の結果、赤潮。
10月28日は釧路~えりも岬沿岸に縮小。
11月に入ってから赤黒い領域が次第に見えなくなって、
今月(12月)は根室海峡で一部赤黒く見えるもののK.selliformisによるものではない、とのこと。
海面水温 SST Sea Surface Temperature
の画像を見ると
赤潮発生領域は確かにえりも岬以西より低水温。
オホーツク海は結構赤い。
特に樺太(サハリン) - アムール川の間宮海峡。
昨年(2020年)の同時期にカムチャッカ半島南部沿岸でみられた魚介類の大量死もK.selliformisによるもの。
「標準モニタ – 全球」 - クロロフィルa濃度の2020/09/29~10/06、10/07~10/14を見るとカムチャッカ半島南東沿岸(オホーツク海ではない)が赤黒い。
今回の北海道の赤潮も湾内ではなく外海で発生しているので、(直接の)原因は人為的要因ではなさそう。
海流が変化しているのでしょうか。