3月21日に緊急事態宣言が解除されて、以降、埼玉、千葉、神奈川は辛うじて緊急事態から逃れているが、東京、京都、大阪、兵庫は4月25日から5月31日まで再び緊急事態。愛知、福岡も5月12日から31日まで緊急事態。
全般的に暗いニュースが多い。
対して4月・5月は、いい陽気で外は明るい。
かくして緊急事態宣言の効力は失われていくのであった。
もっと厳しい措置が必要という声もあるが、昨年であればともかく今はワクチンがあるのでワクチン接種を進めていく他ないだろう。
ワクチンは2回接種する必要があるが(1回だと効果が弱い)、
Our World in Data - Coronavirus - Vaccinations(ourworldindata.org/covid-vaccinations)やジョンズ・ホプキンス大学 Coronavirus Resource Center(coronavirus.jhu.edu/) - Vaccinesによれば、
イギリスのワクチン接種率は、1回以上接種が全人口の52%、2回接種が26%。
日本の接種率は、1回以上接種が全人口の約3%、2回接種が約1%。
現在、大阪、兵庫はじめ日本各地で感染者が増えているのは、従来よりも感染力が高い変異株(N501Y)の仕業。
この変異株は昨年12月-今年1月にイギリスで確認されている。
イギリスではN501Yの感染拡大中にワクチン接種が始まり、3-4ヶ月程経った現在、感染者数・死者数は激減している。どこまでがワクチンの効果か定かでないが、効果があることは確か。
ワクチン接種率の目標は6-7割。
※ 基本再生産数 R0=2.5のとき60%、R0=3.3のとき70%。
日本では副反応が気になって、みながみな率先して接種する環境ではないが、それでも接種率6割前後ならば達成可能ではなかろうか。
残念ながら五輪は1年延期して1年前より状況が悪い。
開催可否が願望よりも疫学的にみて判断されるべきというのであれば、なおさらワクチン接種が重要。
奇跡的に1年足らずで(信頼できる)ワクチンが開発された。
だが、せっかくワクチンがあっても接種までの道のりが存外険しい。
流行当初言われていたようにウイルスが弱毒化してただの風邪になってくれれば良いが、なかなかただの風邪になってくれない。
ただの風邪と思えば自然とみな警戒しなくなり、現に医療関係者など除くと大方緊張感はなくなっているが、反面、5月に入っても重症者が増え続け、若い人の重症化も増えている。
やはりただの風邪ではない。
パンデミックはまだ終わっていない。
世界の感染状況(累計)は、
5月12日時点で、世界の感染者1億5926万人超(うち9524万人が回復)・死者331万人超。
追)一部、別ページへ移転 →
※ ジョンズ・ホプキンス大学 Coronavirus Resource Center参照
SARS-CoV-2の主な変異株
新型コロナウイルス SARS-CoV-2は半月程で1塩基変異して、その多くは無害とされるが、細胞に付着・結合する部分(=スパイク蛋白質 S)が変異したものの一部は、
- 感染力が高い ・・・ 感染・伝播性上昇
- 免疫([中和]抗体の攻撃)から逃避する、ワクチンの効果を減弱させる ・・・ 中和能低下(免疫逃避)
- 重症化させる(感染後の症状を重くする) ・・・ 病毒性上昇
といった懸念がある。
- 一番最初は「チャイナ ブカン(武漢)型」。今は消失。
-
昨年(2020年)世界中に拡がったのがD614G変異株 --- 「欧州型」およびその派生群
この変異株のスパイク蛋白質 Sをターゲットにワクチン開発。
国内で「第二波」、「第三波」をもたらした派生群は、B.1.1.284とB.1.1.214。
さらにD614G変異株から派生して、悪影響が「懸念される変異株 VOC Variants of Concern」の筆頭がN501Y変異株。
ちなみにVOCの一歩手前が「注目すべき変異株 VOI Variants of Interest」。
- N501Y変異株 --- イギリスで初検出
B.1.1.7、VOC-202012/01
追)新呼称「アルファ株」
正式にはB.1.1.7で、いくつか変異しているうちの1つがN501Y。
※ B.1.1.7変異株のS(スパイク蛋白質)の変異は、N501Y、D614Gなど9ヶ所
感染力が従来株より高い。
※ 最大7割増加(最大1.7倍)など
大阪、兵庫など日本各地で従来株から置き換わって現在の「第四波」をもたらしている。
- N501Y、E484K二重変異株 --- 南アフリカで初検出
B.1.351、501Y.V2 --- 南アフリカ
追)新呼称「ベータ株」
P.1、501Y.V3 --- ブラジル
追)新呼称「ガンマ株」
P.3 --- フィリピン
南アフリカ、ブラジルの変異株がVOC。
- E484K変異株 --- 海外から入ったとみられるが、起源不明
B.1.1.316、R.1
関東地方で確認されて、少し前まで東京で多かったが、ほぼN501Yに置き換わっている。
その間、東京は大阪ほど感染者数が増えていなかったので、E484K単独(N501変異を伴わない)ではN501Yより感染力が低いとみられる。
ただし、E484Kは免疫逃避が懸念されている。
変異株の名前は以前記したとおり。
E484Kの場合、ウイルスのスパイク蛋白質 Sのアミノ酸配列の484番目がE(グルタミン酸)からK(リシン)に変異。
N501Yの場合、501番目がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変異。
アミノ酸配列については以前少しとりあげた。
下図は国立感染症研究所 「新型コロナウイルスSARS-CoV-2 Spikeタンパク質E484K変異を有するB.1.1.316系統の国内流入(2021年2月2日現在)」のページ(www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10188-493p02.html)中の「ゲノムネットワーク図」。 ・・・ ※ リンク切れ。国立感染症研究所は2025年4月から国立健康危機管理研究機構
新型コロナウイルス SARS-CoV-2のゲノムの変異箇所の図。

- L452R
、E484Q二重変異株 --- インド
B.1.617
追)新呼称「デルタ株」。B.1.617.2系統。主要変異はL452R、D614Gの他、T478K、P681R
L452R、E484Q二重変異株は「カッパ株」でVOI。B.1.617.1系統
インドにおける感染爆発に関与。
「デルタ株」は日本でも5月12日からVOCとして監視体制強化。
N501Y変異株と同程度の感染力もしくは高い可能性。
追)高い感染力
本日(5月13日)、神奈川でも初確認。良からぬニュース。
まだまだウイルスは変異し続ける。感染者も増えていく。
一方、一部で免疫逃避が懸念されるものの、変異株はみなワクチンの効果あり、ということなので、暗い中にも明るいニュースがある。
※ 効かないワクチンもあるかもしれないが
これから先はワクチン頼みだが、水際で止めてくれないとなかなか終息しない。