2022年2月の侵攻から1年以上経過して、ウクライナの反転攻勢(反攻)、領土奪還開始。
6月6日、ドニプロ川(ドニエプル川) ヘルソン州カホウカ・ダム決壊。
砲撃による損傷もあって、前々から壊れる可能性が指摘されていたが、自然に壊れたわけではなさそう。
ダムを占拠していたのはロシア側で、放水せず、決壊前、水位が非常に高かった。
加えて爆破による破壊の可能性が指摘されている。
※ 地震観測網 NORSAR --- ダムが決壊したとされる時刻、ダムの位置を震源とする震動を観測
アメリカの早期警戒衛星 --- ダム決壊直前、爆発に伴う熱を検知
ロシア側破壊工作グループの通話傍受
守勢に転じているロシアがウクライナの攻勢を阻むため意図的に起こしたとみるのが自然。
ウクライナは洪水による被害、その後生じる水不足の対応に追われる。さらに敷設された地雷が流出した。
ダム破壊によるロシアのデメリットはウクライナに比してほぼない。
クリミアへの給水はウクライナが奪還すればウクライナが管理することになる。
ダム破壊による浸水域の多く(約7割)はロシアの占拠する左岸側(南側)だが、これまで1年以上、たとえ親ロシア派住民であっても無差別に民間人が犠牲になってきた。人命軽視もさることながら、数多くのインフラを破壊し続け、今なおウクライナの土地を焦土に変え続けている。
ロシア兵は浸水域から東の激戦地へ移り、
その激戦地でもウクライナの攻勢を阻むべくダムを破壊していると聞く。
どちらがダムを破壊したのか?
断定できないので「分からない」と報じるメディアも多いが、
中立的にみてロシアが悪い。
ロシアによる侵略が大元なのだから。
ロシア発の情報に嘘が多いのは残念。
今回のダム破壊による死者・行方不明者は十数人ないし数十人と伝えられているが、これもなかなか信じがたい。ドネツク州バフムトの戦いにしても死者数はよく分からないし、ダムのあるドニプロ川も前線で正確なことは分からない。
ロシア占拠側であってもウクライナ人が住み続けている。しかし、被害の全貌はウクライナが奪還するまで分からない。
NASA Harvestのページ 浸水域、運河網の図など →
カホウカ・ダムの上流にあるザポリージャ原子力発電所の原子炉は昨年運転停止していて、必要な冷却水も近くの別の貯水池から賄えるということで、緊急事態には陥っていない。
が、ここも今後注意を払わなければならない。
IAEAの事務局長は1年以上ずっと頑張っている。
ウクライナの領土奪還は、守りを固めている陣地へ攻め込むので、厳しい戦いになる。
みな奪還できれば良いが、多大な犠牲が伴うことを当然視するのは一般には難しい。
したがって奪還支援とは別に仲裁しようとする動きがあること自体は良いことだと思う。それらの国々がロシアに対し、撤退を要求できれば良いのだが……。
準備して臨んでいるとはいえ、航空戦力なしに立ち向かっている点が気になる。
NATOの国々はウクライナを支援し続けているが、みな奪還させるつもりはないのかな、とも思ってしまう。
大局としてはヘルソン州・ザポリージャ州奪還へ進んでいくとみられるが、いろいろと考えさせられる。