秋。1年で最も科学に関心が向く時期……
でしょうか。
今年(2022年)のノーベル賞受賞テーマは、
生理学・医学 --- 古代DNA
物理学 --- 量子もつれ
化学 --- クリックケミストリー、生体直交化学
去年(2021年)は地球温暖化の予測、不斉有機触媒など。
物理
量子もつれ(エンタングルメント)は、近頃耳にすることが増えている量子コンピューターの基礎。
いろいろ難解。
2つの量子(光子、電子などの素粒子)がどんなに遠く離れていても瞬時に情報が伝わったかのように変化し合う---
非現実的だが現実に起こる現象。
このテレポーテーション(瞬間移動)のような非局所的相互作用などを巡って、
量子力学が不完全でまだ補完する余地があるのではないか、つまり隠れた変数が存在するのではないか、というアインシュタイン(懐疑派) vs ボーア(量子力学完結派)に代表される論争が続いて、
やがてその裁きを可能にするベルの定理/ベルの不等式が登場する。
ベルの定理によると
量子力学が間違っていない限り、隠れた変数は存在しない、
我々世界の背後に潜む実在は局所的ではない---
ベルの不等式の検証実験を行ったクラウザー氏、アスペ氏が物理学賞受賞者。
直接観測することはできないが、
深部に潜む実在は非局所的である(どんなに遠く離れていてもつながっている)
らしい---
共同受賞のツァイリンガー氏は、量子もつれを利用して「情報」の「テレポーテーション」に初めて成功した。量子コンピューターなどの基礎技術。
日本物理学会(www.jps.or.jp/) - お知らせ 2022/10/4のページにいろいろ解説。
追)量子についてまとめた。
化学
クリックケミストリー Click Chemistry
---目的の機能を持つ高分子(機能性高分子)をカチッカチッと効率良く合成(開発)する[新]手法。
クイックでもあるがクリック(カチッ)。
今世紀初頭、バリー・シャープレス氏が確立。今回2度目の受賞。共同受賞者はメルダル氏、ベルトッツィ氏。
※ 1度目は2001年に不斉触媒研究の野依氏、ノールズ氏と共同受賞
生体直交化学
---生体内で干渉し合わない化学反応。
クリックケミストリー、生体直交化学の代表的な化学反応が、
アジド-アルキン付加環化反応 Azide-Alkyne-Cycloaddition AAC。
※ AACが無触媒で、銅触媒利用がCuAACとのこと
アジドは-N3を持つ化合物(アジ化物)
アルキンはアセチレンなどC≡C結合を持つ化合物
以上、要約。
参考)クリックケミストリーの概念と応用 / シャープレス氏など、訳:北山隆
Wikipedia クリックケミストリー(ja.wikipedia.org/wiki/クリックケミストリー)の外部リンクからアクセスできる
生理学・医学
受賞者はスバンテ・ペーボ氏。どこかで見覚えが……。
2020年10月に新型コロナウイルス絡みで、
OIST 沖縄科学技術大学院大学(www.oist.jp/)にアクセスして見た。
※ 記事のタイトルは『古代人類ネアンデルタール人とデニソワ人を語る-私たち現生人類を定義するものとは?』。確か内容は同じ
本も出ている。
『ネアンデルタール人は私たちと交配した / スヴァンテ・ペーボ、訳:野中香方子 / 2014 / 文藝春秋』
今年(2022年)、日本国際賞受賞。
古代生物の化石、古代人骨からDNA抽出して、特にネアンデルタール人のゲノム解読、デニソワ人の発見は長らくミッシング・リンクとされてきた部分なので、大きなニュースになった。
今のところ
ネアンデルタール人の遺伝子は南アジアとヨーロッパの人々に受け継がれて、
デニソワ人の遺伝子はアジア~オセアニアの人々に受け継がれている
という理解になるが、
一足先にアフリカを出ていたのがネアンデルタール人および「枝」分かれしたデニソワ人で、
「我々」(=ホモ・サピエンス[・サピエンス])祖先は別の「枝」を地味に歩んで、遅れて(約20万年前以降)アフリカを出て、
4万-3万年前、ほぼ完全に置き換わっていった。
考古学です。『ジョークと思った』と言うのはジョークでなく本音かも。
ブレークスルー
日本人の受賞はなりませんでした。
村上氏の受賞はなりませんでした。
その一言いちいち要らんでしょっ。
ブレークスルー賞(breakthroughprize.org/)もある。賞金高額。
基礎物理学、生命科学、数学の3部門あって、
今年(2022年)9月、生命科学で日本人の受賞。
※ 2023 BREAKTHROUGH PRIZE
IIIS 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/japanese/) 柳沢正史機構長
『新規生理活性ペプチド「オレキシン」を発見し、過眠症「ナルコレプシー」の病態を解明』
睡魔との闘い
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