秋。1年で最も科学に関心が向く時期……でしょうか。でしょうか。
今年(2021年)のノーベル賞受賞テーマは、
生理学・医学 --- 痛みや温度を感じる仕組み
物理学 --- 複雑系(地球温暖化の予測、無秩序とゆらぎの相互作用)
化学 --- 不斉有機触媒
去年はブラック・ホールなど。
物理
地球温暖化の予測は、シュクロウ・マナベ(真鍋淑郎)氏が受賞。
※ 共同受賞者はクラウス・ハッセルマン氏
量子物理のナンブ(南部)氏(故人)、青色発光ダイオードのナカムラ(中村)氏と同じくアメリカ国籍。でも日本出身だから話題になる。
コンピューターを駆使したシミュレーション。
コンピューターの力を借りないと解けない方程式もあるわけで、特に気候変動のシミュレーションは「模擬地球」で計算量が膨大なので、スーパー・コンピューターの力が欠かせない。
モデル構築までは理論的。
だが、シミュレーションの結果は理論的と呼ぶにはやや飛躍がある。予測には不確実性がつきまとう。
それでも観測データ(こちらも日進月歩)と合うモデルに改善されて、より再現性の高いモデルになっていく。
異色な感じもするが、もう1人の受賞者ジョルジョ・パリージ氏の研究は無秩序とゆらぎの相互作用なので、受賞テーマは複雑系。
難解な分野。
当ブログは天気関連のページがそこそこ占めているが、温暖化で台風の数が減る、という理屈がよく分からなかった。シミュレーションの結果。
エルニーニョ/ラニーニャもシミュレーションの結果。
二酸化炭素濃度が高くなると温度が上がる、という理屈(温室効果)はまあまあ分かる。
地球気候変動モデルの土台を築いたのがマナベ(真鍋)氏。
大気モデル、海洋モデル、(陸面モデル)
を結合した
大気海洋結合モデル
を開発。1960年代のこと。
気象庁HP … 大気海洋結合モデル(www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-7.html)
地球温暖化の予測については捉え方がみな同じではないようだが、世界各地で豪雨や熱波、山火事などの自然災害が頻発し、アルプスの氷河や北極の氷が目に見えて溶けている。
気候変動が半世紀前のシミュレーションどおりに進んでいるのであれば、半世紀後もシミュレーションどおりの可能性が高い
と思う。
化学
化学賞は不斉有機触媒の開発。受賞者はベンジャミン・リスト氏、デービッド・マクミラン氏。
リスト氏は北海道大学特任教授でもある。
--- 北海道大学 化学反応創成研究拠点 ICReDD(www.icredd.hokudai.ac.jp/)
不斉(ふせい)とはキラル(掌性の)、キラリティ(掌性) 、ということで光学異性体(鏡像異性体)。
※ 分子式は同じだが構造の違う、よって性質の違う化合物が異性体
左型と右型があって、有用な(医薬品など)片方のみ合成(不斉合成)するための触媒が不斉触媒。
触媒は化学反応を促す物質。
酵素、金属触媒、そして有機触媒。
触媒分野は過去、日本人受賞者も出ていて、今後も可能性がある分野。
生理学・医学
生理学・医学賞は痛みや温度を感じる仕組み。受賞者はデビッド・ジュリアス氏、アーデム・パタプティアン氏。
ヒトの五感 -視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚-
のうち触覚 = 痛みや温度などの感覚(皮膚 … 受容体 … 神経)
の受容体、言わばセンサーを発見した。
--- TRPチャネル、Piezoチャネル
なお、辛味は味覚ではなく触覚(痛み)。