3日前(21日)に日本列島の南の海上で弱い熱帯低気圧が台風(強い熱帯低気圧)12号に変わったが、上陸することなく予想より東の海上を抜けて去っていった。
北風吹いて寒いのがちと哀しい。暑いと寒いの間が短すぎる。
昨年から時折GPV Weather - 各国モデルの台風進路予想のページ(www.gpvweather.com/typmodels.php)
を見るようになって、ヨーロッパECMWFの進路予想が当たっているという印象を持っていたが、今回、3日前の予想では、我が道歩んで日本海へ抜けていた。
予想は難しい、ということで粗探しはよそう。
ちなみに海水温は下がってきているが、台風が発達するといわれる27℃よりも高い。
たいして発達せずに去っていった。
温暖化で台風の数が減る?
ところで
- 温暖化で大気中の水蒸気量増加 ⇒ 激しい豪雨
- 温暖化で台風が大型化
というのは何となく分かるが、
- 温暖化で台風が発生しにくくなる
というのが何となく分からない。
温暖化が進むと大気が安定して積乱雲が発達しにくくなる、という理屈もさることながら、台風の発生場所が別の海域へ移るなどして発生数は減らないのではないか、など疑問がつきまとう。
納得いく説明がないか探していたら、日本気象学会 『天気』(www.metsoc.jp/)の
「数値予報から気候予測研究へ ~地球温暖化時の台風の動向の研究の進展~ -2016年度藤原賞受賞記念講演- 杉 正人 64巻(2017)」
に『温暖化により台風の数が減る』というモデル実験の結果が共通認識になるまでの経緯が書かれていた。
研究者の間でも懐疑的な声があったのだから、分からないのも無理はないことか。
この論文には筆者が云う「気候研究の定理」も記されている。
- 定理1 数値予報モデルは予測と理解の強力なツールである
- 定理2 気候システムの本質は放射対流平衡である
・・・ 全球平均の放射冷却と(主に熱帯の)積雲対流に伴う降水による凝結熱(水蒸気が水に変わる時放出する潜熱)が平衡状態にある - 定理3 積雲対流(に伴う降水)による凝結熱は(その加熱によって生じた)上昇流による断熱冷却とバランスする
+
- 定理4 熱帯のSST(海面水温)偏差は積雲対流活動の偏差を通して全球の大気循環の偏差を生じさせる
温暖化で降水量が増えるが、大気中の水蒸気量増加の割には増えない(少し増加)
--- 放射冷却量が大幅には増えない(少し増加)ことと対応 ・・・ 定理2
雲の中の上昇流が弱くなる
--- 上昇流による断熱冷却は大幅には増えない(少し増加) ・・・ 定理3
大気安定度は大幅増加(積雲対流が起こりにくくなる)
⇒ 温暖化で熱帯の降水量は増えるが、熱帯の上昇流が弱くなり、熱帯大気の安定度が増し、熱帯の循環が弱まるため、台風の数が減る
完全には理解しきれていないが、まあ、やむを得ないことか。
ともかくモデル実験の結果では減る、ということで……。
今のところ大型台風襲来の気配はない。このままあと1ヶ月過ぎてくれると助かる。